床ずれ(褥瘡)とは
床ずれ(褥瘡)は、長時間の体位圧迫によって血流が阻害され、組織が損傷することです。
この損傷は、「圧迫された時間」と「圧迫の強さ」によって決まり、組織が引っ張られたりずれたりすることで発生します。
褥瘡のリスクは特に、長期間の寝たきり、痛みやしびれを感じにくい状態、運動障害、栄養不足、または高齢で皮膚が薄い方において高まります。
これらに当てはまる方は、数時間で褥瘡が発症する可能性があるため、2~3時間ごとの体位交換が重要です。
また、褥瘡予防においては、適切な栄養や皮膚ケア、圧力分散支持材の使用も欠かせません。
床ずれ(褥瘡)になりやすい人
床ずれ(褥瘡)になりやすい人の状態は主に以下の3つが考えられます。
健康状態が悪い
褥瘡の原因は、皮膚に栄養や酸素が行き渡らなくなることであり、栄養不足や過度の痩せがそのリスクを増加させます。
また、栄養不足によるむくみによって皮膚の細胞が破綻し、褥瘡のリスクを高めることもあります。
健康状態が悪い人の特徴としては
- 過度の痩せ
- 浮腫(むくみ)
が挙げられます。
皮膚の状態が悪い
失禁などで湿気が増すと水分によって皮膚が膨張し、ふやけた状態になります。
ふやけた状態は、摩擦が起きやすくなり、褥瘡が発生しやすくなります。
一方で、乾燥した肌も褥瘡のリスクを高めます。
加齢による水分量の減少で皮膚が乾燥し、摩擦に対する耐性が低下するためです。
皮膚の状態が悪い人の特徴としては
- 失禁がある人
- 皮膚が乾燥している
- ずれや摩擦が起きやすい
ことが挙げられます。
適切な介護が受けられて
いない
介護者の知識不足や、一人暮らしで適切なケアが受けられない場合、褥瘡の予防や管理が適切に行われずリスクが高まります。
床ずれ(褥瘡)に
なりやすい部位
床ずれ(褥瘡)が発生しやすい部位は、主に体重がかかりやすい箇所に集中します。
これらを知ることで、予防策を講じやすくなります。
仙骨部(せんこつぶ)
「お尻と腰の間の骨」の部分で、仰向けに寝ると体重の約40%がこの箇所にかかります。
仙骨部が褥瘡発生の最も多い部位です。
肩甲骨部(けんこうこつぶ)
仰向けで寝たときに体重がかかる部位の一つです。
体の向きを定期的に変えることで予防可能ですが、自力で動けない人は特に注意が必要です。
大転子部(だいてんしぶ)
足と腰の付け根に位置し、横向きに寝ているときに体重がかかりやすい部位です。
長時間同じ姿勢を続けると褥瘡のリスクが高まります。
踵骨部(しょうこつぶ)
いわゆる「かかと」のことで、仰向けの姿勢で体重がかかりやすく、他の部位へ気を取られている間に褥瘡が発生することもあります。
その他
後頭部、肘関節部、耳、くるぶしなど、体位に応じて皮膚が地面やベッドと接触しやすい部位も褥瘡が起こりやすい箇所です。
床ずれ(褥瘡)のある方に
対する当ステーションの役割
体温測定
発熱の原因が全身性の感染症か、褥瘡部の創感染によるものかを確認します。
聴診
発熱時には、胸部の音を聴取し、呼吸器感染症などの異常がないかを検討します。
触診
手足や胸などを触診し、皮膚のハリや脂肪の量などから褥瘡発生のリスクを評価します。
危険因子のアセスメント
ご利用者様の生活状況や自立度、日中の過ごし方、姿勢などから褥瘡の危険因子を評価し、環境を調整します。
栄養指導
褥瘡治癒に必要な栄養状態になることができるように栄養指導を行います。
例えば、高エネルギー・高蛋白の栄養補助飲料や亜鉛が豊富な栄養剤などを導入し栄養状態の改善を図ります。
体位の調整
外圧を軽減するため、体位変換や臥位、座位のポジショニングを適切に行えるように指導や援助を行います。
これには高機能マットやポジショニング用クッションの活用も含まれます。
- 体位変換:訪問看護や介護を通じて、可能な訪問回数の中で定期的に実施。
- 臥位ポジショニング:ベッドの角度調整時には「圧抜き」を行い、マットレスと体の間に手を入れて圧力を軽減します。高機能エアマットやウレタンマット、ポジショニングクッションの使用でズレや摩擦を防ぎます。
- 座位ポジショニング:長時間座る場合は、車椅子用の圧力除去クッションを使用して姿勢を整え、圧力を緩和します。
清潔ケア
皮膚を清潔に保ち、排泄物による汚染を防ぐことで、褥瘡の治癒を促進します。
排泄ケアとスキンケアが重要な役割を果たします。
- 排泄ケア:仙骨部の褥瘡予防には、汚染防止のための適切なドレッシングと、おむつや収尿器を活用します。
- スキンケア:圧迫や摩擦が起こりやすい部位には、保湿ケアを定期的に行います。
褥瘡の医療処置
褥瘡の治療は早期発見と処置により、褥瘡の深達度の軽減や治癒にかかる時間を、短縮できます。
深達度は、ステージⅠからⅣ、分類不能、深部組織損傷疑いの6段階に分類され、「分類不能」は深達度が不明な壊死状態、「深部組織損傷疑い」では外見は正常でも内部の軟部組織に損傷がある状態です。
消退しない発赤、紅斑
圧迫を解消しても消失しない皮膚の発赤や紅斑には、撥水クリームを塗布し、排泄物の汚染から守ります。
真皮にまでとどまる皮膚傷害
真皮層に達する浅い皮膚傷害や水疱には、壊死組織がない薄く赤い底面が特徴です。
これらには、薄くて褥瘡の約2倍の大きさの患部が見える透明ドレッシング材を使用し、患部を保護します。
全皮膚欠損(脂肪層の露出)
皮膚が損傷して皮下脂肪が露出し、場合によっては黄色い壊死組織やポケット、瘻孔が見られます。
処置では、軟膏を塗り、ポケットがある場合には、患部をよく洗浄した後、新しい軟膏を塗り、ガーゼでカバーします。
ガーゼがずれないように、固定にはテープを用いることがあります。
全層組織欠損
全層組織欠損では、骨、腱、筋肉が露出し、しばしばポケットや瘻孔を伴います。
黄色や黒色の壊死組織が付着している場合もあります。
この状態では、外科的処置が必要で、その後に適切なドレッシング材を選んで使用することもあります。
感染のある傷にはこれらのドレッシング材は使用しません。